サンゴを守ろう! NOアンカーリング

海に負荷をかけないダイビングを!!

サンゴを守ろう!

はじめに

パパラギは1986年の開設の年に沖縄へのダイビングツアーを開始し、これまで約650回以上(参加者のべ約5,500人)の沖縄ツアーを行なって来ました。(※2012年集計データ)

その頃からダイビングをして沖縄を訪れていたダイバーは御存知と思いますが、1998年のエルニーニョによる影響等で地球規模でのサンゴの白化現象でミドリイシ属のサンゴをはじめ多くの優先種が壊滅的なダメージを被ったことで、造礁サンゴが広がる沖縄の水中景観が劇的に変わってしまいました。
多くのダイバーが心を痛め、地球規模での環境変化に危機感を持ったものでした。

しかし、私達が沖縄へダイビングに行き始めた当初からとても気になっていた事がありました。
それは現地ダイビングサービスのダイビングボートによるアンカーリング(投錨)によってサンゴが壊されている姿だったのです。

サンゴの上に平気でアンカーリング

ダイバーがボートダイビングをする際に船を固定するためのアンカーリングを 無造作に行なう行為がどれだけサンゴを傷つけ、壊滅的なダメージを与えて いる事でしょう。 これは本当に痛々しい姿であり、利用する私達も本来なら容認すべき行為 ではないのです。
さすがに最近は少なくなっているものの、海洋レジャーに関る各業者間、 業界内でのルールや規制などはほとんど存在していない現状もあり、各自、各事業者の自主的な行動規制にゆだねられているのが現状なのです。

スノーケルツアーをやっている現地の
ボートから投げられたアンカー(2011年)



3錨泊(3びょうはく)は必要ない

最近、沖縄本島からケラマ諸島への大型によるボートダイビングが多くなりました。
そのダイビングでの3点を取るアンカーリングは、あくまでもダイバーの快適さを優先する考え方である事に強く疑問を持ってしまいます。

通常、強風等の問題がない様な海況では単錨泊(ひとつのアンカーのみ)で十分船を固定でき、風向きの変化によって船の向きや位置が変化したとしてもダイバーの安全には問題がありません。
しかし、最近のボートダイブでは船尾から更に2本のロープを使いアンカーリングしている姿を多く見かけます。

最近の本島からの大型ダイビングボートには船尾にそれ用のウインチが付いているぐらい。
理由は、船を3方向にアンカーで固定する事で昼食中や水面休息中に揺れがなく、ダイバーが
酔わなくて“快適だ”との事です。
一瞬のダイバーの快適さのために、他のものが犠牲になる事に大変疑問を持たざるを得ません。
必要なアンカーは1本!これが私達の考えです。

アンカーリング作業の危険性

サンゴ等を傷つけないためにガイドダイバーが潜ってアンカーリングをするという必要があるでしょうか?
疑問を感じる一番の理由はその危険性です。沖縄では若い女性ガイドダイバーがアンカー作業中に重大な事故にあった例が過去に数件あります。
又、余計に反復潜水をしなければならないガイドダイバーの健康上の心配を考える必要があります。
アンカーリングを含む水中作業は私達ベテランダイバーでさえ様々なリスクがある事で出来るだけ回避したいと考えている事です。
ましてやダイビング歴の浅い、しかも体力や体格が貧弱な場合もあり得る女性ガイドダイバーに
“修行”と言わんばかりに作業をさせるダイビング業者には強い疑問を感じます。

スノーケルツアーをやっている現地のボートから投げられたアンカー

スクーバでアンカー作業中のダイバー



強く望みたいブイ設置

毎回のダイビングでいちいちアンカーリングをしなくても水面、もしくは水面下に設置したブイからロープを取る1点取りの方法を私達は強く望みます。
砂地や岩場の水底に設置する事でサンゴを始めとする生物類へのダメージは軽減出来ます。
海中に人工物を設置する事への異論もありますが、私達は“二兎は追えない”と考えます。
むしろ、GUAMでの例の様に設置による生物類へのダメージがないのなら「鉄」の人工物を海底に設置する事は魚つきが良くなる事も含め海洋環境にはプラスの面がある事も最近の研究等でわかっています。(※鉄は魔法つかい・畠山重篤著 小学館)
もちろん費用や手間はかかるにせよ、長い期間で考え、健全なサンゴ礁の保全が、大局的に見て高い経済効果を生むという見地に立っての取り組みを望みます。
各業者間や漁協との「協働」でそれが成されている例も少なくありません。
もし、海面使用料 又は 協力金の様な形である程度の料金を徴収し、それらがこの様な保全に役に立つ事に使われる(当然、公開を望みますが)のであれば、大いに協力をすべきと思います。

GUAMアンカーブイ設置

グアムブルーホールでのブイ設置は1,000t級の船で使用しているアンカーをベースにして固定している。

GUAMアンカーブイ回収

水面下にあるブイからロープを取る



パパラギのツアーで望む事

私達は少なくともこういった考え方を理解して頂ける現地の事業者の皆さんとの“協働”で今後も沖縄ツアーを継続させて行きたいと考えています。
現在の状況ではまだまだ課題はありますが、以下の規準を決め、ダイバーには何よりも安全第一のダイビングとサンゴを始めとする環境への負荷を最低限におさえたダイビングを考え、実践して行きたいと考えています。

  • ・アンカーリングをしないダイビングボートでダイビング
  • ・可能な限りブイ設置による船の固定
  • ・現地ガイドダイバーが潜ってアンカーリング作業をしないで済む手順の選択
  • ・ツアー引率スタッフと現地ガイドスタッフの協働による環境保全を含むブリーフィングの選択(インタープリティング)

サンゴは泣いている





最後に

決して安くはない費用とせっかくのお休みを使ってダイビングに来て頂ける多くのレジャーダイバーの皆さんには先ずは安全第一!
そして最高のダイビングシーンを経験して頂くために、私達職業インストラクターは努力をするものと認識しています。
しかし、人命という最も優先すべき事と同時に守るべき事があるというのも理解している必要があると考えます。

実は“パパラギ”という言葉はサモア語で「よそ者・外来者」という様な意味で、ダイバーはあくまでも海の生物達にとっては訪問者(よそもの)であるということを忘れたくない。
そんな想いからつけられました。

あくまでも“おじゃまします”という気持ちで皆さんと素晴らしいダイビングライフを楽しみ、発見や“学び”がある事を願っています。

文責 武本匡弘
日本サンゴ礁学会会員

参考文献
「海洋学」原著第4版 ポール・R・ビネ著 東京大学研究所 監訳
「サンゴ礁学」    日本サンゴ礁学会編 東海大学出版会
「鉄は魔法つかい」  畠山重篤著     小学館
「海は泣いている」  吉嶺全二著     高文研
「パパラギ」     エーリッヒ・ショイルマン著 立風書房

 

投稿者プロフィール

パパラギ”海と自然の教室”
パパラギ”海と自然の教室”

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