駿河湾での海洋調査(プランクトンネット)

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駿河湾での海洋調査(プランクトンネット)

駿河湾での海洋生物調査(プランクトンネット)

2005年8月1日~3日で東海大学所有の海洋調査研修船「望星丸」にて、海洋観測の一環としてプランクトンの採集を行ってきました。

プランクトンの採集は、海洋資源の研究の為にも欠かすことの出来ない観測です。
今回は、実際の観測風景を交えながら、プランクトンの採集方法及び、採集物についての報告を掲載いたします。

尚、望星丸でのその他の海洋観測及び、船上生活の模様に付いては、こちらをご覧下さい。


プラクトンネット

「プランクトンネット」という言葉をご存知ですか?
一般的にはあまり馴染みのない言葉だと思います。
プランクトンネットとは、水中に生息するプランクトンや魚の稚魚を採集する道具です。形としては、虫取り網の棒の部分をとっただけの形をしています。

網の直径は、採集するプランクトンの種類によって変わりますが、写真のプランクトンネットの直径は、だいたい1.5m位です。網の目はとても細かくなっていて、 約0.38mmとなっています。
プランクトンの採集には、このプランクトンネットを使用します。

今回の観測で用いたプランクトンネットは、マル稚ネットという種類で、
主に動物プランクトンや稚魚等の比較的大きなプランクトンを採集するものです。

プランクトンネットには今回観測で用いたマル稚ネットの他に、植物プランクトン専用、動物プランクトン専用と種類があります。
プランクトンネットは網の目の細かさで採集対象物が変わっていきます。
植物プランクトン専用のネットが一番目が細かく、稚魚専用のネットの目が一番粗くなっています。




プランクトンって何?

プランクトンと言って何が思い浮かぶでしょう?

「小さくて顕微鏡でないと見れないもの」
「ミジンコみたいなやつ」
「魚の餌」
...こんな答えが思い浮かぶのではないでしょうか?

プランクトンというのは、非常に広義な意味を持っています。
『プランクトン』という言葉の定義は
『泳力が無い、もしくは持っていても潮流に逆らうことのできない浮遊生物』 となっています。
大きさは関係ないんです。(大多数のプランクトンは極小生物であるのは確かです。)

成長すると2mを超える回遊魚のマグロも、卵から孵ったばかりの時は、潮の流れに逆らって泳ぐ事ができません。つまり、マグロは生まれたばかりの時は『プランクトン』なのです。 クラゲもプランクトンに分類されます。カニやエビといった甲殻類も、孵化 したばかりの時は、プランクトンなのです。

↑プランクトンと言われると、最初に想像するのはこんな感じの生物ではないでしょうか?


大多数の水生生物が、生まれてからある一定の期間は『プランクトン』に分類されるのです。(ただし、一部のサメ類によく見られる卵胎生の水生生物や胎生の水生哺乳類の場合は、『プランクトン』に分類される時期はありません。)
マグロやイワシのように成長すると回遊生活をするものを『ネクトン』、ヒトデや貝、ヒラメ等のように成長後、海底で生活をする生物(底生生物と言います。)を『ベントス』と呼びます。全ての水生生物は大別するとこの3種類に分類されます。

左からカニの幼生(メガロパ)、カンパチの稚魚、水生節足動物...と、種類が全然違いますが、「潮に逆らって泳ぐだけの泳力がない」という事で、上の3体の生物はいずれも 『プランクトン』 に分類されます。 成長するとカニは『ベントス』に、カンパチは『ネクトン』に分類されますが、 右上の水生節足動物だけは一生『プランクトン』に分類されます。

プランクトンネットの実施方法

今回の望星丸の観測では、プランクトンネット表層10分曳きを行いました。
プランクトンネットを沈める深度によって、表層曳き、5m曳き、中層曳きと観測名称が変わります。また、ネット自体をどのくらいの間水中に沈めてプランクトンの採集を行ったかによって、○分曳きの部分が変わります。今回は表層、つまり水面で10分間プランクトンネットを流しました。

プランクトンの採集方法はいたって簡単です。プランクトンネットを水中に沈めた後、船を走らせます。
プランクトンは前述したように、自分で泳ぐ力を持っていませんので船で網を動かして採集を行います。


揚集されたプランクトンネットを海水で洗います。採集したプランクトンを一度大きな容器に集め、その後採集瓶のついたネットで海水ごと濾しとります。

観測ポイントと観測物

今回は1日1回、3日間で計3回の観測ポイント(ステーションと言います)がありました。
それぞれの観測ポイントは、駿河湾沿岸部、駿河湾中心部、太平洋と深度や環境の違う3つのポイントでした。詳しい場所については地図をご覧下さい。

プランクトンネットは同一ステーションで異なる深度で観測を行い、そのステーションにおける深度毎の生物分布(垂直分布といいます。)を計測します。今回は、『海洋観測におけるプランクトンネットを体験する』というのが目的の実施だっため表層のみの観測となりました。 各ステーション毎に観測された生物をいくつか紹介いたします。

が観測ポイントです。クリックすると採集した生物が表示されます。


観察を通じて

今回のプランクトンネット観測で、普段私たちが活動している江ノ島・鎌倉を始めとする湘南地域や、伊豆ではあまり観察することの無い沢山の生物を見る事ができました。 海で潜っているときに目にしたことのあるものから、初めて見るものまで、沢山のプランクトンが採集できました。

顕微鏡でなければはっきりとした姿を見ることの出来ない小さなプランクトンたちが、餌となることで、他の大きな生物達を支えていること、そしてそれがゆくゆくは、私たち人間をも支えている事実は、私たち人間の生活が自然全体と切っても切れない関係にある事を改めて認識させられました。


今回のプランクトンネットの観測中、写真にあるプラスチックゴミがネットに多数引っかかりました。 プラスチックゴミによる海洋汚染は、海洋生物に与える影響が大きく深刻な問題となっています。

プラスチックは自然界には存在しない物質の為、一度自然界に廃棄されると、分解されること無く半永久的に自然界を漂うことになります。海中を漂うプラスチックは、その質感や見た目がクラゲに似ている為、それらを捕食する動物達が餌と間違えて食べてしまうという事態が、今世界中で起きています。
プラスチック類は生物の体内に取り込まれても分解される事はもちろん、体外に排出されることも無い為、体内に取り込まれたままの状態となります。プラスチックが体内にたまった生物は、餌を満足に取る事が出来なくなり、いずれは餓死してしまう運命にあります。
最初は海岸に捨てられたゴミだったのかもしれません。ですが、海岸に捨てられたゴミが波にさらわれ、沿岸部を漂い、海流に流され、やがては大海原を漂う。
普段の何気ない行動が、実は自然や他の生物達に対して重大な脅威に発展する可能性がある事を考えさせられました。

今回望星丸で体験した、プランクトンネットのような専門的な観測を行う事はなかなか難しいかもしれません。
ですが私達は、ダイビングという活動を通して絶えず海の変化を観察しています。
ダイビングや生物観察会、シュノーケリング等、海での活動を通して、海や、海に生きる生物達との係わり合いを、今までとは違った視点で考えてみるのもいいのではないでしょうか?

画像提供:東海大学教養学部

本HP作成するにあたり、画像提供及び、生物解説をしてくださいました、東海大学教養学部教授の藤野先生、ならびに北野先生にこの場を借りて御礼申し上げます。

<文責:渡邉 健司>


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