パラオ 大統領への手紙
世界自然遺産パラオの海で何故fish feedingをやっているのか?

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世界自然遺産パラオの海で何故fish feedingをやっているのか?

パラオ 大統領への手紙
世界自然遺産パラオの海で何故fish feedingをやっているのか?

始めに:

このレポートは、パラオ共和国がその法律や条例などによって海洋環境の保護に関しての強い実行力を持っていただきたいという要望書です。

とりわけ、fish feeding の禁止や ジェリーフィッシュレイクへの日焼け防止ローションを塗ったままの入場などは規制が必要であると考えます。
また、そこへの人数規制のない放置状態は、近い将来、水質の悪化を招き、早い速度でクラゲの絶滅を予想させるものです。
これらの現実に関して、大統領、関係官僚達が深い理解と強いリーダーシップを発揮していただきたい。
この要望書は日本のダイバー、スノーケラー達の声を代表して書かれています。
そしてそれを補助するために幾つかの国とリゾート地での例、及び科学者からの知見などを添えてあります。

パラオツアーの中止:

私は約30年幾つかの側面でダイビングビジネスに関わってきた。
ひとつは、ダイビングスクールの経営で、国内12カ所でスクール経営、グアム、沖縄に支店を設営している。(グアム支店は1990年、ミクロネシアで最も歴史が古い"Marianas Divers,Co"を企業買収した。)
もう一つは、海の環境保護と学校教育とスノーケルによる啓蒙活動を主としたNPOの運営で、日本で初めてスノーケル学校授業を行っている。
そして、1995年、日本のダイビング事業者のための組合、「スクーバダイビング事業協同組合」の設立に関わった。
現在この組合には120の事業者が加盟し、安全、、環境 及び賠償責任保険の普及を行っている。

私は、最近日本の多くのダイビング事業者、NPO団体、環境保護団体、学校、教育機関、そして多くのダイバーたちとの関係の中で「パラオの海洋環境が著しく悪化しているのではないか?」
「中国人観光客の激増により危機的になっている」という声を聞く。
そして、昨年パラオスノーケリングツアーの参加者達より強い抗議を受けた。
それは中国人スノーケラー達がfish feedingをしている光景を見たからだ。

私達は、長年パラオにダイビングとスノーケルツアーを行ってきた。
その中でも、NPOが主催するスノーケルツアーは、環境に関しての意識が高い人、教育関係者などの参加が多い。
特にパラオは、「世界自然遺産の海」「生物学者である天皇陛下が訪問した国」という格別のイメージを持っているため、この落胆は大きかった。
残念ながらこのツアーは「当分の間中止」となった。

Fish feeding 禁止は、今や世界の常識:

1、ハワイ州オアフ島「Hanauma Bayでの例で考える。      
1999年2月12日、州の土地自然資源局は出のHanauma Bay餌付けでの行為を禁止する新規定を採択した。
その後、州検事局の審議を経て州知事の署名を得、4月15日に正式に法律として発効。
1999年11月1日からこの法律が施行。
この法律に違反すると$1000以下の罰金及び(若しくは)30日間の実刑が課せられます。

Hanauma Bayで人々が魚に餌を与えるようになったのは70年代中頃だと言われています。その後、パンや弁当の食べ残し、スナック菓子などを魚に与える人が後を断たず、大きな魚ばかりが集まるようになってしまったため、大きな魚(ミナミイスズミやボラなど)に追いやられてしまった魚を呼び戻し、本来のバランスのとれた自然環境に戻す事などが狙い。(同時に湾内の水質向上も期待されていた。)

何より、餌に群がる不自然な魚の姿を見るよりも自然の姿の魚を見ている方が楽しいものです。

~餌付け禁止法が設けられた理由~ (ハワイHanauma Bayの例)

①  餌付けをすることにより、私たちは魚の生活と住む場所を変えてしまうことになる。例えば、本来岩礁の内側にはいないが岩礁内に大量に生息するようになってしまった。

②  餌付けで怪我をすることがあり危ない。幾つかの魚は餌が海に撒かれるととても攻撃的になる。我を忘れて餌と手の区別がつかなくなった魚は、人の手を噛んでしまうことがある。ハナウマベイでは毎日、誰かが必ず手を噛まれていた。魚の中には歯を持つ種もいて、噛まれると怪我をすることがあることを覚えておいて欲しい。

③  餌は魚の健康にとって好ましくない。養殖用に作られた魚の餌は、Hanauma Bayに住む魚の健康を維持するのに必要な栄養素の全ては含んでいないから。

④  餌付けは生態系のバランスを崩してしまう。餌付けをすると湾が本来持っている力を超える数の魚が生息するようになり、これが湾全体に大きなストレスを与えてしまう。

⑤  餌付けは魚の観察を却って難しくしてしまう。シュノーケリングをすれば簡単に数多くの魚を目にすることが出来るが、餌付けでは2~3種類の魚しか目にすることが出来ない。

⑥  餌の入っているビニール袋はHanauma Bayの景観を損ねてしまうばかりでなく、海の生き物を危険にさらすことにもなる。

※ at Hanauma Bay the number of visitors is limited, fish feeding is prohibited, there is one day a week when no visitors are allowed, all visitors must have special education class before going to the beach.

以上は、ハワイでの実例ですが、私は他の場所でも目撃し、全く同じことが言えると確信している。

2、学術的見地 DR、Bill Alevizon の論文
http://umino-npo.com/column/a_case_for_regulation_of_the_feeding_of_fishes_and_other_marine_wildlife_by_divers_and_snorkelers.html

3、その他の例

① Feeding is banned in Californian marine parks
https://www.wildlife.ca.gov/Conservation/Marine/MPAs/Network/Central-California#26822439-feeding-of-fish-and-wildlife-ccr-title-14-section-632a6

② Fish feeding and chasing is prohibited in the Marine Park in the (Egyptian) Red Sea
http://www.projectoceanvision.com/redsearegulations.htm

③ It's prohibited in Florida
http://myfwc.com/fishing/saltwater/recreational/feeding-fish/

④ In Australia, fish feeding not prohibited, but 'responsible' feeding is encouraged
http://onboard.gbrmpa.gov.au/home/high_standards/responsible_reef_practices/fish_feeding

最後に:

多くの人は、パラオ観光局発行のガイドブック 「Alii Palau」の」記事
・「ロックアイランド観光の注意事項」(58p)
・「ジェリーフィッシュレイクの生態系を維持するために」 (57p)
を読み「何故?禁止ではないのか?」と疑問を感じている。

また、これまで私の部下たちは一度もこれらの「注意事項」を管理するレンジャーの姿を見たことがない。
そして残念なことに中国人スノーケラーの激増とマナーのない姿に怒りの声があった。
同時に、「高い環境税を払っているだけで、環境保護に役立っているという事を実感できない。」という強い抗議の声さえある。

これらの声を受け私は最近パラオを訪れた、そして滞在中偶然に
「Manta Ray Conservation Act signed into law」という新聞記事を読んだ。
良いニュースだが、同時に「世界初 国立サメ保護区」を制定した国にしては遅いアクションと感じた。

中国人スノーケラーに責任はない、私の大切な隣人達が批判される事に心を痛めた。
それは彼らに対しての差別意識を助長し2国間の軋轢につながる。
現地の中国人業者とパラオ政府に責任があると認識している。
どうか深い洞察と強いリーダーシップを発揮していただくことをお願いいたします。

私はパラオの素晴らしい水族館を訪れました。
海と陸の総合的な関係やそれらの仕組みに関する数々展示は「人工的なイルカ曲芸ショー」を行っている日本の大型水族館よりも優れたものであり、天皇陛下が訪問するにふさわしい施設と感じた。

「自然をありのままに見せる」 「その関係を持続可能なものする。」 そのためには法による管理が必要です。
そしてそのことがパラオの学校教育、とりわけ環境教育プログラムに強い影響を与え、観光ビジネスに携わる全ての人の意識改革に寄与するものと信じています。

 

武本匡弘

パパラギダイビングスクール 会長
日本スクーバダイビング事業協同組合理事
日本サンゴ礁学会会員

※この手紙の原文はこちらをご覧ください。


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